2020年01月、大阪大学の研究チームが、iPS細胞を心臓に移植したとのニュースがありました。
iPS細胞による再生医療は、世界的にも注目されていますが、患者への適用は慎重です。その理由は、iPS細胞が心臓や皮膚や胃などの様々な臓器の細胞に分化する能力がある一方で、癌化などのリスクがあるからです。
阪大・澤芳樹教授が、記者会見の席上で、経過について慎重に観察していくと説明しています。
一方で、名古屋大学病院では、iPS細胞の癌化(腫瘍化)リスクを避けるために、幹細胞培養液による再生医療によって、幹細胞を使うのと同じような効果が得られることを確認しています。
iPS細胞の癌化リスクとは?
名古屋大学病院でも、幹細胞による再生医療をおこなっていますが、公式サイトのなかで、iPS細胞の癌化(腫瘍化)リスクについて、次のように説明しています。
iPS細胞から作製した臓器に分化していないiPS細胞が含まれていると、その未分化なiPS細胞が腫瘍化してしまうのです。治療のために移植した臓器のiPS細胞によって腫瘍ができてしまっては、治療による恩恵が少なくなってしまいます。
このリスクを避けるために、名古屋大学病院・腎臓内科では、iPS細胞より比較的安全性の高い間葉系幹細胞(MSC)を使った治療を推奨しています。
しかし、MSCの安全性が高いと言っても、幹細胞そのものですから、癌化(腫瘍化)のリスクがゼロとは言えません。
幹細胞培養液でも幹細胞と同じ効果?
幹細胞培養液というと、幹細胞培養液コスメが頭に浮かびます。
高級美容液として知られる”ヒト幹細胞培養液コスメ”には、実際には幹細胞は配合されていません。配合されているのは、幹細胞を培養したときの「幹細胞培養液」です。
再生医療の分野でも、名古屋大学大学院の研究チームが、かなり以前から「幹細胞培養液」を使った再生医療の研究を進めています。
癌化などのリスクを避ける目的もありますが、幹細胞の培養には条件を満たした特別な施設が必要なこと、製造コストが高いなどの理由から、「幹細胞培養液」を再生医療に応用するための研究を始めたようです。
2017年1月25日、NHKニュースによれば、ラットを使った研究で、幹細胞培養液にも幹細胞と同様の効果が確かめられたとのこと。
こちらが、そのニュース番組の動画です。
副作用がないヒト幹細胞培養液
名古屋大学の研究グループによれば、幹細胞培養液を使った治療について、次のように説明しています。
あごの骨を失った患者に、ヒトの幹細胞培養後の培養液を投与する臨床研究を開始し、治療を受けた患者で再生期間が大幅短縮するだけでなく、副作用がない。
さらに、名古屋大学研究グループ・上田実教授は、ヒト幹細胞培養液の投与により、移植した細胞による腫瘍化の危険性が完全になくなったと説明しています。
ヒト幹細胞培養液に幹細胞と同じ効果がある理由
幹細胞培養液は、幹細胞を培養するときに使われる培養液ですが、培養するときの過程で、細胞の再生に必要な情報伝達物質のサイトカインなどが、培養液のなかに放出されます。
このサイトカインは、細胞のレセプター(受容体)と結合して、細胞の増殖や傷の治癒などにはたらきます。
サイトカインの数は300種類とも500種類とも言われていますが、EGF、IGF、TGFなどのグロースファクターもサイトカインの一種です。スキンケアに関心がある方なら、よくご存じの名前だと思います。
つまり、細胞の増殖にはたらくサイトカインが含まれている幹細胞培養液にも、幹細胞そのものと同じような効果があることになります。
ヒト幹細胞培養液コスメの副作用について
ヒト幹細胞培養液コスメについて、副作用を心配する声もありますが、幹細胞そのものが含まれない幹細胞培養液は、癌化などのリスクの心配はないと考えていいようです。
国内で販売されているヒト幹細胞培養液コスメに配合されている培養液は、厳正な基準にもとづいて製造されたものが使われており、これまで重大な副作用などの報告はありません。
美容成分が化粧品に配合される場合、成分の効果は角質層までしか届かないとされています。ヒト幹細胞培養液コスメについても、この基準はかわりません。
この理屈からすれば、真皮層の細胞までは働かないことになりますが、ヒト幹細胞培養液コスメを使う方が増えているのは、満足度の高さをあらわしています。
ヒト幹細胞培養液の効果効能を保証するわけではありませんが、価格も以前と比べてかなり下がってきましたので、一度ためしてみるとよいかもしれません。
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